そして誰もいなくなる

今邑彩著そして誰もいなくなる中公文庫刊読了。完全ネタバレ。興味ある人はこんな駄文は読まないで下さい。

タイトルを見れば、すぐ分かると思いますが、クリスティのそして誰もいなくなった本歌取りな作品です。

本歌取りとは何か。著者があとがきに於いて、少しくだけた説明をする所に因ると、先人の作をちょいちょいパクリながら新しいように見えるモノを作ることだそうです。本来和歌などの手法なんだと思います。近年だと、オマージュなんて言い方が当たり障りなくていいんでしょうが。本歌取りって言葉もなんだか、粋ですよねえ。なので、なるたけ、その言葉を使おうと思いますが、ついつい元ネタとか言う言葉も使ってしまうでしょう。

ざっと、あらすじ。とある女子校の演劇部が学校の記念式典でそして誰もいなくなったを戯曲化して上演することとなる。すると、本番中、原作で最初に殺される役の女生徒が、突然毒死する。その後も原作に則った形役名、順番、殺害方法で、殺されていく女生徒達。犯人の動機は?警察や、教師の捜査は?真犯人は?そんなことが二転三転しながら、ストーリーは進んで行く。但しである。原作に則るのであれば、あの娘が犯人じゃん。そうでないにしても、最重要人物じゃん。元ネタを読んだことのある方は、この娘というのが、何役なのか、すぐに分かることでしょう。

世界的に有名なミステリーですから、読んだことのあるすじを知っている人も多いかと思います。そんな人もそうでない人も楽しめる作りにはなってます。しかし、中盤からは元ネタから徐に離れていきます。当然のことだし、そうでなきゃ面白くない。後半のひっくり返しに継ぐひっくり返しは面白いです。衝撃的とまではいきませんが。そしてラスト。へーそうしますか。あまり面白くもない刑事達の日常に随分ページを割いているのもそういう訳でしたか。このラストの件は同じクリスティの小説アクロイド殺しに寄せている気がするのは、そしての真犯人のような狂気をはらんだ犯人ではなくもっと悲しい人間として作りたかったのだろうな。そしてエピローグ。真の犯人の告白。この部分、とても良いのだが、その告白を読み手に渡す人物がここまで、酷い描かれ方をしていたのが、気になる。しかし、この告白を読んで、まだ事件は終わってないのだ。だからこその、いなくなった。という過去完了形ではなく、いなくなる。という未来予測形のタイトルなのかな。と思った次第です。

本歌取り、オマージュ、パクリ、色んな呼び方はあるが、本作の良い所は、その元ネタのテーマ。裁かれざる犯罪とは何かというものをしっかり描いているところではないだろうか?

元ネタを良く知っている人の方がより楽しめるかも。